本紙インタビュー前編で、「ダイバーシティが人材戦略を変える」と指摘し、柔軟性と安定性に基づく人材戦略や雇用管理の姿を示した諏訪教授。戦略的な持続可能性を考えられるリーダーの育成、企業の人材育成のあり方について聞いた(後編)。
若者の「社会人基礎力」を高める投資を
前に踏み出す力が問われる変化の時代
リーダーを育てるにはどうすれば良いでしょうか。
リーダーに育つ可能性がある人に場(機会)を与えることこそが自然な対処法でしょう。場において鍛えられていくべきです。昔の軍隊や最近の官僚の不祥事を見ても、いびつなエリート教育は不自然で、無理が生じるようです。
私は数年前から経済産業省で社会人基礎力の議論をしてきました。これからの人材に必要なのは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つ。確かに戦後の教育も「考え抜く力」の一定部分は鍛えてきたと思います。受験勉強は限られた時間や制約条件の中でいろいろ工夫して勉強を進めていくわけですし、難関大学ほど応用力を問う問題が出ます。
ところが、そこを突破した人たちの「前に踏み出す力」は怪しい。正解、つまり過去を見て失敗なく進めることが得意な人たちは、欧米を見て、その正解(過去)の延長線上で伸びていける時代は良かったのですが、ここ20年ほど通用しなくなってきました。
失敗する可能性はあっても前に踏み出していくことが必要な変化の時代となっています。こうした時代には、前に踏み出しつつ、原点に返り、今後は何が大事かを考え抜く力が問われます。
受験勉強の最大の問題は、チームワーク力を全く考慮していないことでしょう。受験選抜では、個人的な結果だけが問われ、チームを組んでみんなで成果を挙げることはおよそ評価されない。そうすると、どんな人が育ってくるでしょうか。どうしても自分さえ良ければという発想となる可能性が高くなる。
日本の企業ではリーダー候補として有名大学の体育会系の学生を積極的に採ることが多く、企業トップにも体育会出身者が多いようです。基礎的な学力があってチームワークや前に踏み出す訓練がなされているからといった理由からでしょう。しかし、スポーツに熱中しすぎると、専門的訓練が欠けてしまうことも起きる。
極端なことを言えば、18歳までは有名大学に入るために受験で自分が勝てばよいという人間形成です。18歳からは専門的な勉強はしないまま上下関係が厳しい体育会で自分の所属するチーム(組織)が勝てば良いとばかりに頑張った人たちが少なくなかったとすると、これからの知識社会を乗り越えられるでしょうか。
トップになってからの付け焼刃では難しく、専門的な知的訓練が不足し、教養や専門知識といった基盤がないと、きちんとした戦略が立てられない。そうした真のエリートを育成できないと、海外に出ても自他ともに恥ずかしい思いをしかねません。

