昨年秋以降の急速な景気悪化を受けて、雇用のあり方に注目が集まった。企業の人材戦略がこれまで以上に問われる時代に入っている。企業の人材戦略の課題と、将来を見据えて取り組むべき施策について、法政大学大学院の諏訪康雄教授に聞いた(前編)。
昨年秋以降の不況で雇用環境は大きく痛みました。注目した動きは何ですか。
まず、企業業績の急速な落ち込みが目を引きます。これまで好調だった輸出関連企業に非正規雇用されていた人たちを直撃しました。愛知県の有効求人倍率は1月に1.0を切り、4月には0.52まで落ち込んでいます。
産業の活発な地域で雇用が急落した事態には驚かされます。これがじわりじわりと内需型企業、サービス関連企業に及んでいくとなると、さらに厳しい状況が予想されます。
2つ目は、雇用調整のスピードが速まったことです。非正規雇用を中心にきわめて早い速度で雇用調整がなされた。正規雇用へと一段進んだ雇用調整が広がる懸念も強いです。今のところ雇用調整助成金などで政策的に歯止めがかかっていますが、これで支えきれなくなったときには、さらなる調整へと進む可能性があります。
過去の不況期では雇用を守るため過剰人員を社内や関連企業で抱え込む努力がなされましたが、日本型雇用をめぐる対処の仕方が変わってきたと感じています。欧米ほどではないが、雇用調整はスピードアップしています。
欧米で失業率が9%に達している中、日本はまだ5%台。やはり日本は雇用調整に慎重なのですが、その分、社内に過剰人員を抱えているとすると、この部分での調整が起こり得ます。
3つ目は、過去の不況で既存の雇用を守るためのしわ寄せで犠牲になった若者たちの問題です。マクロ的にはフリーターの相当数が30 代となり、この世代の雇用不安、処遇の低さ、将来のキャリア展開の閉塞性などが指摘されています。
個々の企業ではこの世代が中心となる現場力も低下していると言われています。雇用関係が多様化する中で、適切に教えたり、マネジメントしたりすることができず、技能の継承が困難となる事態も起こっています。




